PRS S2 シリーズの塗装の秘密
アメリカの本社工場で生産されているS2シリーズ。あらゆる部分のコストを抑えることで、レギュラー(CORE)シリーズよりも手に入れやすい価格になっています。(2024年7月時点でCOREの50~60%くらいの販売価格)
コストと言っても、ギターという楽器にとって ”かけなくても良いコスト"と "かけるべきコスト" があります。
メーカーごとにそのコストのバランスの取り方は異なり、それが「ギターのどの部分を重視しているのか」という製作者の考え方の違いとして表れます。この点も興味深いポイントです。
ということで「S2シリーズのギター作りで特に重視している部分にどのようにコストをかけているか」を紹介した前回の記事に続き、今回はS2シリーズの塗装についてご紹介します。
PRSのS2シリーズがどこに注目してギターを作っているのか、そしてPRSのものづくりに対する誠実さが感じられると思います。
塗装の重要性と種類
まずギターの塗装についてですが、塗装は木材を守るだけでなく、音にも大きな影響を与える重要な工程です。特に、仕上げ塗装であるトップコートや、その下地となるアンダーコートはとても重要で、塗膜が薄いほど木材本来の響きを引き出すことができます。
しかし、塗装を薄く仕上げるには高度な技術が必要です。
一般的な塗装の種類として、「ラッカー塗装」、「ポリ塗装」、「ウレタン塗装」、「オイル塗装」などが挙げられます。それぞれに特徴があり、音にも違いが出ます。また、塗装の種類によってコストや技術面での違いもあるため、メーカーによってはコストや生産性を考えてモデルごとに塗装を使い分ける場合もあれば、音質を重視してあえて手間のかかる塗装を選ぶ場合もあります。
PRSの塗装
PRSが理想とする塗装は「薄くて丈夫で、輝きのある仕上がり」です。
創業当初のラッカー塗装から始まり、その後ポリやウレタン塗装やV12と呼ばれるフィニッシュなど、理想の仕上げを実現するために塗装方法を追求してきました。このことから、PRSはコストをかけても質の高い塗装方法を選んでいることが分かります。
ちなみに、2021年から本格的に採用されている塗装では、ベースコートに「CAB」という素材が使われています。この素材は硬さや耐久性に優れ、サウンドにも良い影響を与え、さらに同じ品質で大量生産が可能です。そしてトップコートにはNitro(ラッカー塗装)が使用されています。
S2シリーズの塗装
S2シリーズの塗装については、COREモデルと同じ仕様が採用されています。つまり、使用されている塗料や塗膜の薄さ、そしてコスト面においてもCOREと同等ということです。
また、ギターの塗装がサウンドに影響を与えるという点を考慮すると、S2シリーズではコストをかけてでもサウンドを重視していることが分かります。
S2シリーズはコスト面で制約がある中でも、「PRSが作るギターで最も重要なのはサウンドである」という考え方を反映しており、その姿勢は塗装方法の選択からも感じ取れるのではないでしょうか。
【2024/7/3 追記】現在はアンダーコートも含めて、CORE同様の Nitro (ラッカー) 塗装にアップデートされています。今まで以上にすばらしい仕上がりとなっていますので、ぜひお試し下さい。